化粧品売り場やクリニック、美容医療の現場などで「化粧品」「医薬部外品」「医薬品」という言葉を見聞きしたことがある方も多いのではないでしょうか?これらはすべて人の肌や健康に関わる製品ですが、実は法律でしっかりと定義が分けられており、それぞれに認められている効能・効果、そして広告や表示に使える言葉の範囲も異なります。本記事では、化粧品、医薬部外品、医薬品の定義から、それぞれの効能・効果、広告表現の制限について、わかりやすく丁寧に解説していきます。
化粧品・医薬部外品・医薬品の定義と特徴

<化粧品の定義と特徴>
化粧品とは、「人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、皮膚または毛髪をすこやかに保つために、身体に塗布・散布等して使用されるもので、その作用が緩和なもの」と薬機法(旧薬事法)で定義されています。
特徴:
- 身体に対する作用は”緩和”
- 基本的に治療や予防などの医学的効果はうたえない
- 厚生労働省の承認は不要で、販売届出制
例:
- 化粧水、乳液、美容液、シャンプー、口紅、ファンデーションなど
表現の制限:
「肌に潤いを与える」「なめらかにする」など、美容や清潔に関する表現はOKですが、「シミを消す」「ニキビを治す」などの治療を連想させる表現はNGです。
<医薬部外品の定義と特徴>
医薬部外品とは、「人体に対する作用が緩やかでありながら、予防や衛生に一定の効果があると認められた成分を含む製品」で、厚生労働省の承認を受けて効能効果の表示が可能なものです。
特徴:
- 化粧品と医薬品の中間的な存在
- 一定の効能効果を表示できる
- 成分・効能効果は国の承認が必要
例:
- 薬用化粧品(美白・抗炎症)、育毛剤、デオドラント、薬用歯みがきなど
表現の制限:
「ニキビを防ぐ」「シミ・そばかすを防ぐ」「育毛を促進する」など、一定の範囲で効果効能をうたうことができますが、「治す」「完治する」といった強い表現は不可です。
<医薬品の定義と特徴>
医薬品とは、「疾病の診断、治療、予防を目的とした製品で、身体に対して強い生理的影響を及ぼすもの」と定義されています。
特徴:
- 厳格な臨床試験やデータに基づく審査を経て厚生労働省が承認
- 使用目的や用量・用法が明確に規定
- 医師の処方が必要な「医療用医薬品」と、薬局などで購入できる「一般用医薬品」に分かれる
例:
- 抗生物質、降圧剤、鎮痛剤、AGA治療薬、アレルギー治療薬など
表現の制限:
「治療」「改善」「回復」など、病気に対して明確に効果があることを謳うことが可能ですが、広告規制は非常に厳しく、医師の推薦や誇大表現は禁止されています。
効能・効果の違いと広告表現の制限

<化粧品の効能・効果と広告表現>
化粧品で認められている効能効果は、薬機法で「56項目」に限定されています。具体的には「肌に潤いを与える」「日やけを防ぐ」「毛髪にツヤを与える」など、あくまでも日常の美容・清潔に関する範囲にとどまります。
NG例:
- 「ニキビを治す」
- 「美白効果でシミが消える」
これらは医薬部外品や医薬品の範疇に入るため、化粧品の広告としては認められていません。
<医薬部外品の効能・効果と広告表現>
医薬部外品では、有効成分とその効果が厚生労働省により認められているため、化粧品に比べて効果を明確に表現することが可能です。
OK例:
- 「肌荒れ・ニキビを防ぐ」
- 「メラニンの生成を抑え、シミ・そばかすを防ぐ」
ただし、「治療する」や「完全に回復する」などの表現はNGです。
<医薬品の効能・効果と広告表現>
医薬品はその性質上、病気に対する明確な治療効果を表示できる唯一のカテゴリです。
OK例:
- 「高血圧を改善する」
- 「AGAを治療する」
しかし、広告については以下のような厳しい制限があります:
- 医師の推薦・使用体験談の禁止
- 「絶対に効く」などの誇大表現は禁止
- 一般用医薬品以外は原則として広告不可
表示・広告における注意点と違反事例

<誇大広告と優良誤認表示の禁止>
化粧品や医薬部外品の広告で最も注意が必要なのが「誇大広告」です。根拠のない表現や、あたかもすべての人に効果があるように見せる表現は、薬機法および景品表示法に違反するおそれがあります。
違反例:
- 「このクリームで確実にシミが消えます」
- 「毛が100%生える驚きの育毛剤」
これらは科学的根拠がない、あるいは効果を過大に表現しているとされ違反の対象になります。
<医薬品的な表現の禁止>
化粧品や医薬部外品であっても、医薬品のような強い表現を使用することは禁止されています。
NGワード例:
- 「治す」「改善する」「再生する」「回復する」
これらの表現は医薬品に限定されるため、医薬部外品や化粧品で使うと違法となります。
<ステルスマーケティングの禁止>
2023年10月より、景品表示法においてステルスマーケティング(いわゆるステマ)も規制対象となりました。広告であるにもかかわらず、それを隠して製品を推奨する行為はNGです。
注意点:
- インフルエンサーがPRであることを明示せずに製品を紹介する
- 使用体験談風の文章に広告表記がない
これらは不当表示とされ、罰則の対象になる可能性があります。
まとめ
- 化粧品:作用が緩和で、美容・清潔目的。効能・効果表現は限定。
- 医薬部外品:緩やかな作用ながら、一定の効能・効果をうたえる。
- 医薬品:治療や予防のために使われ、効果の表現も可能だが広告は厳格に制限。
- 広告表現は分類に応じて明確に区別し、薬機法と景品表示法を遵守することが必須。
自社の製品がどのカテゴリに該当するかを正しく理解し、誤解のない表現を使うことが、ユーザーの信頼を得る第一歩です。特にOEMや自社製品を扱う企業にとっては、商品設計段階から法令を意識したマーケティング設計が求められます。
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