
「この表記、本当に大丈夫?」
化粧品を取り扱うクリニックやメーカー、特にOEMでの製造を考えている医師・経営者の方にとって、商品の「表示」は非常に重要なポイントです。パッケージに何をどう書けばいいのか、間違うと薬機法違反になるリスクもあり、慎重に対応する必要があります。
この記事では、化粧品に義務づけられている表示項目や、成分表示のルール、そして意外と混同されやすい「商品名」と「販売名」の違いまで、具体例を交えながら詳しく解説します。
化粧品の表示義務は薬機法で定められている

化粧品のラベルや外箱に記載すべき内容は、「医薬品医療機器等法(薬機法)」や「化粧品等の適正広告ガイドライン」によって定められています。これらは消費者の安全を守るための基本的なルールであり、違反すると行政指導や回収命令といった処分の対象になることも。
特に、OEMで製品を製造・販売する場合は、「販売者」や「製造販売業者」としての責任が発生するため、ルールを正しく理解しておく必要があります。
表示が義務付けられている8つの項目とは?

化粧品に表示しなければならない項目は、以下の8つです。これらはすべて義務であり、省略はできません。
1. 販売名
まず重要なのが「販売名」です。これは製品の識別を目的として、薬機法に基づいて届け出られた正式な名称です。
たとえば、表面に「〇〇クリーム」と書いてあっても、薬機法上の「販売名」は別で管理されていることがよくあります。
例:
- ブランド名:ドクターセラム ホワイトクリーム
- 販売名:DSホワイトクリームc
この販売名は、厚生労働省への届け出時に使われ、製品のロット管理や回収時にも使用される正式な名称です。
2. 製造販売業者の名称・住所
実際に販売許可を取得し、責任を持って市場に流通させるのが「製造販売業者」です。OEMで製造する場合でも、製造業者ではなく製造販売業者の名前と所在地を必ず記載しなければなりません。
また、製品によっては「製造所固有記号」などで製造工場を示す場合もありますが、基本は製造販売業者の情報が優先されます。
3. 内容量
内容量は、グラム(g)またはミリリットル(mL)などの単位で明記します。
例:
- 内容量:30mL
- 内容量:50g
実際に手に取った時の「量感」や「使用期間の目安」を判断する材料として、消費者にとって重要な情報となります。
4. 使用方法
使用目的が明確でない、もしくは誤解を招く可能性のある製品には、具体的な使用方法の記載が求められます。
例:
- 洗顔後、適量を手に取り顔全体になじませてください。
- 朝晩のスキンケアの最後に使用してください。
特に医療機関専売品など、特別な使い方を前提としている場合は、しっかり明記しておくべきです。
5. 使用上の注意
消費者が安全に使用できるように、リスクや注意点を記載します。特に敏感肌用、ピーリング成分配合などの製品では慎重な記載が必要です。
例:
- 傷や湿疹など異常のある部位には使用しないでください。
- 使用中に赤みやかゆみ等の異常が現れた場合は使用を中止し、皮膚科専門医にご相談ください。
また、保管方法(高温多湿を避けるなど)や子どもの手の届かない場所に置くことなども、記載が推奨されます。
6. 全成分表示
すべての配合成分を、配合量の多い順に記載する必要があります。化粧品表示名称として認められている名称で表記し、INCI名(英語などの国際的な表記)は使えません。
例:
- 水、BG、グリセリン、ヒアルロン酸Na、フェノキシエタノール、香料
なお、1%以下の成分については順不同で記載できますが、1%以上のものについては配合量順にしなければなりません。
7. 原産国名(輸入化粧品の場合)
海外から輸入した化粧品については、どこの国で製造されたかを明記する義務があります。
例:
- 原産国:韓国
- 原産国:アメリカ
これにより、消費者は製品の出どころを把握でき、品質に対する安心感にもつながります。
8. 製造番号または製造記号
万が一製品にトラブルがあった場合に備えて、ロット番号や記号などの記載が必要です。これにより、製品の追跡や回収がスムーズに行えます。
成分表示の細かいルールとは?

全成分表示にはいくつかの細かいルールがあります。見た目の印象やブランド戦略よりも、法律上のルールを優先しなければなりません。
配合量順に並べる
1%を超える成分は、配合量が多い順に並べる必要があります。たとえば、水やBG(ブチレングリコール)、グリセリンなどはたいてい最初に来ます。
1%以下の成分については、順不同で記載してOKですが、多くのメーカーは製品開示の透明性のため、ある程度の順番で記載する傾向にあります。
使用するのは日本の「表示名称」
使用する成分名は、日本の「化粧品表示名称」でなければなりません。INCI名(例:Sodium Hyaluronateなどの英語表記)は不可。消費者が誤解したり、違法と見なされる可能性があります。
香料や着色料には別ルール
香料は、複数種類を使っていても「香料」とまとめて記載することができます。また、タール系色素は「赤〇号」「青〇号」など、厚労省で認可された化粧品用着色料である必要があります。
商品名と販売名の違いを正しく理解しよう
意外と混同されやすいのが、「商品名」と「販売名」の違いです。
商品名は消費者向けの名称
「ホワイトエッセンス」「リフトモイストクリーム」など、一般的にECサイトや広告で使われるのが商品名。ブランドの世界観やターゲットの関心を引くように設計されています。
販売名は法律上の正式名称
「WHモイスチャーb」など、製品を法的に識別するための名称であり、製造販売届や製品表示で用います。薬機法上は、こちらが正式な製品名です。
商品名と販売名が異なることは問題ありませんが、販売名の記載を省略したり、逆に商品名を販売名として届け出てしまうと、法令違反になります。
OEMで製造する場合の注意点

OEMで化粧品を作る際も、製造販売業者として薬機法の責任を負うことになります。
- 製造業者(工場)と製造販売業者(ブランド)は明確に区別されます。
- 製造所固有記号などで製造元を明示することもありますが、基本的には製造販売業者の名称を表示するのがルールです。
- クリニック名や医師名を表記する場合は、「医療機関推奨」や「医師監修」といった表現が広告規制に触れないよう注意が必要です。
表示違反によるトラブル事例

- 海外化粧品を日本語訳せず販売 → 表示義務違反で回収対象に
- 成分をINCI名で記載 → 消費者庁から是正勧告
- 「医師監修」や「〇〇院長おすすめ」と記載 → 不当表示として行政指導
- 内容量の記載漏れ → 景表法違反になる可能性も
表示ミスは「ついうっかり」では済まされません。薬機法においては製品の表示は「責任ある医薬品管理」と見なされるため、専門家と相談しながら進めることが大切です。
まとめ

化粧品の製造・販売において、表示ルールの遵守は信頼を得るうえで非常に重要です。
以下が今回の要点です。
- 化粧品には8つの表示義務項目がある
- 全成分表示は日本語の表示名称を使い、配合量順に並べる
- 商品名と販売名は異なり、販売名は薬機法上の正式名称
- OEMで製造しても、表示の責任は製造販売業者にある
- 表示違反は信頼の失墜や行政処分につながる
自社製品の信用と消費者の安心のためにも、ルールをしっかり守り、適切な表示を心がけましょう。
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